トニー・ブレア氏:The Economistにも寄稿
イギリスの前首相、トニー・ブレア Tony Blair氏もThe Economistの読者です。
引退時にはThe Economist にブレア氏の署名つきEssayが掲載されました。
(June 2nd 2007)
「首相になって学んだこと」というテーマで、5つのことを示しています。
以下、Essayを要約します。
1. 傍観者になるな。プレイヤーであれ。
いまや世界は、国家が単独で抱える問題ではなく、互いに責任のある問題を孕んでいる。
アフリカの貧困や気候変動問題は、既に国益というより信念の問題と言えるであろう。
だからこそイギリスは、必要ならば軍事力を以ってしてでも、世界の問題に介入してきた。
コソボ、シエラレオネ、アフガニスタン、そしてイラク。
イギリスが軍事介入をした全てのケースで、残忍な為政者を排除することに成功した。
確かにシエラレオネはまだ混乱の中にあるが、その隣国であるリビアが民主化してきたのはシエラレオネのギャングが瓦解したからだ。
同様に、コソボのおかげで、バルカン諸国は変わってきた。
アフガンとイラクでは、政権崩壊のせいで状況が悪化したと言う向きがあるが、これは危険な議論である。
この意味するところは、「もし政権を倒したら、テロリストが活発化するから、人民を独裁下に放置しよう」ということなのである。
これでは、我々の行動がテロリストの意思によって左右されていることになってしまう。
イギリスは今後も、世界のあらゆる問題について何らかの形で関わっていく。
将来的には全てイギリスに影響を及ぼすからだ。
2. 欧米間の協力は不可欠
過激な左翼でなくとも、アメリカとの同盟に懐疑的な人もいる。
イギリスがアメリカを無視して中国やインドと同盟を結ぼうとしていると主張する人もいる。
現実を見てみよう。
確かに中印は重要である。
しかしアメリカを無視した同盟などありえない。
欧米は同じ価値観を共有している。
お互いに協力すべきであり、だからこそEUはもっと強くならねばならないのだ。
3. グローバルテロリズムに惑わされるな
テロという言葉が特に西洋諸国で間違って使用されていることに危機を覚える。
新しいテロは昔のテロとは違うのである。
現在のテロリズムは、歪曲されたイスラム教によって成立している。
同時に、ムスリム世界の悲劇を体現しようともしている。
テロの方法には皆反対しているが、しかし彼らの信条に同情する者は多くいる。
グローバル化した世界において彼らが採る戦略は非常に洗練されているのである。
脆弱な平和を有している地域は、どのような状況になってもおかしくない。
単純なテロ行為によって、泥沼の紛争を起こすことが可能なのである。
マスメディアに報道されることにより、紛争は世界的に拡散しうる。
実際にテロはイラクの復興を阻害している。
パレスチナとイスラエルの和平交渉を難航させている。
レバノンの民主主義を崖っぷちに立たせている。
フセイン打倒が良かったかどうか討議することはいくらでもできる。
しかし現実を見てみよう。
アルカイダをバグダッドから排除すれば状況の改善は可能なのである。
テロリストを支援しているイラン人達をバスラから排除すれば状況は変わるのである。
今我々に必要なのは、さらなる行動なのだ。
過去数週間だけでも、モロッコ、アルジェリア、パキスタン、インド、サウジアラビアで爆弾テロがあった。
テロに免疫のあるヨーロッパの国など存在しない。
アフリカ、スーダン、ソマリア、ナイジェリアなどのキリスト教とムスリムが共存する地域であってもテロは活発である。
テロが存在するなら、その脅威と戦うには他に方法がない。
交渉の余地もない。
殲滅するしかない。
4. 我々の価値観のために立ち上がれ
軍事活動や暗線保障活動だけでは成功はない。
これは政治的な挑戦なのだ。
テロリストは人間の感情に訴えてくる。
我々はこれに対抗するため、さらに強力なアピールをする必要がある。
『民主主義』や『自由』といった価値観になじみのない者にこれらを押し付けようとするのは馬鹿げたことだ。
しかし人民は違う。
誰が民主主義を排除する方に投票するだろうか。
誰が表現の自由を侵害する秘密警察を好むだろうか。
これらの価値観は世界的に普遍なのである。
我々は自信を持って、彼らの過激なイデオロギーに対抗すべきである。
人々が平和に繁栄することを許さず、女性を蔑視する彼らの信念に挑戦すべきなのである。
5. 今日の議題は明日の議題でもある
以上のアプローチは、世界の人々が共通の価値体系を形作るのに役立つであろう。
今後新たな国や国益が影響力を増してくるこの世界において、それは非常に重要なことである。
将来的には現在よりも西欧の経済的・政治的影響力は衰えるであろう。
その時のためにも、強固な基礎が必要なのである。
世界的に共有された価値観は、我々を導いてくれるであろう。